アルビノーニのアダージョに思うフェイク
昨日、深夜Netflixで「マンチェスターバイザシー」をやっと観ました。この映画、御覧になった方は以下の意味するところお分かりいただけると思うのですが、「やっと」というのは…この映画は去年のアカデミー賞主演男優賞、脚本賞をとった作品。つまり、私としては1年かかってようやく観ることができたのです。
そんな軽々しく、うきうきとは観れないであろうことは予想済みでしたから「よしっ」と意を決して・・・。
やはり、想像通りの内容でした。見終わってエンドロールが流れる間、ずっと考えこんでいました・・・主人公の背負う、人間としてもっとも苛烈な悲劇、苦しみは時間が経とうとも、決して癒されることはないのだ、ということ。しかし、その苦しみと「ともに」うまくやり合って人生を前に進むこともできるのだ、ということ。
タイトルのアルビノーニのアダージョのメロディーが、この映画のベースに流れているのですが、皆さま、ご存じですか?ポピュラー音楽にも編曲されたり、映画音楽としては、このマンチェスター・・・以外でも割と頻回に使われていますので、耳にすると「あ~、これか!」となりますよ⁈
これもまた、私は普段ならまず進んで聴こうとは思わない、それくらい、せつなくて胸をかきむしられる音楽なのです。
しかし、これがまた、以前このコ-ナーで書いた「カッチーニのアヴェマリア」と同じく、作曲はアルビノーニではありません。レモ・ジャゾットという20世紀の音楽学者。こうなると「実はほんとうの作曲者は別の人・・・」なんていうケース、たくさんありそうな気がして来ませんか?
そういえば、何年か前、日本でも「HIROSHIMA」というタイトルの交響曲を書いた自称聾の作曲家が、実はフェイクで、「本当に作曲したのは私です」と暴露したゴーストライターが出てきた。しかも、相手が耳が聞こえないと思ったことは一度もない、とまで言って。そんな事件がありましたね?
そんなこんなですっかり叩きのめされた佐村河内守氏をテーマにしたドキョメンタリー「FAKE」
これも、おススメですよ。
どこかの国の大統領はさかんに「フェイクニュースだ」とマスコミをたたいていますが、このドキュメンタリーは、フェイクって何??そんな迷宮に入ってしまいます。
当たり前ですが、映画はハリウッドのみならず、世界中で作られています。世界一、映画を量産しているのはインドだとも聞きます。国籍を問わず、監督、役者、裏方・・・チーム一丸となって制作され訴えて来るテーマにこれからも感動したいと思っています。
それと…せっかくですから、これを機会にアルビノーニ自身の音楽にも耳を傾けませんか?おススメはオーボエ協奏曲。「ほんもの」だからこそ300年もの時を経ても残った、と思うとなお輝いて聞こえます。
※添付の写真はパリに行った時、セーヌ川沿い骨董屋さんのショーウインドウに並んでいた本物のハープシコードのケース。ちょうどアルビノーニが現役で活躍していた時代のものかもしれません。当然フェイクではありませんw