父からのネウマ譜
レッスン室の壁に、新たに1枚の額が加わりました。ずっとずっと憧れていたネウマ譜。
「ネウマ」とは、一口に言えば、大昔の楽譜、現在のような五線になる前の楽譜のことです。現在の楽譜も、仮に楽譜が読めなくても、美しい、と感じるのですが、ネウマにはさらに時空を越えるロマンを感じてしまうのです。
いつか、この部屋に飾りたい、と願っていました。去年のパリで、サンジェルマンデプレで偶然入った古書店で、素晴らしいネウマ譜に出会いました、しかも羊の皮に書かれた、本物・・・でもお財布の限度を超えていました(泣)
そんなこんなで、先日介護のため帰阪の折、実家の父の部屋で見つけてしまったのです。そうだった!父はこれを自分の書斎に飾っていたんだ!長らく額縁の壊れたのを修理に出す準備のため壁から外したまま・・・認知症が進んでしまったのです。音楽が大好きで、コーラスの趣味もバロック以前の宗教曲専門のセミプロの合唱団、あげくはオーケストラまで作ってしまいました(今は関西の有力なプロオケです)、そんな父が大切にしていたネウマ。母に相談し「もうパパも忘れてるから・・」と娘の私が引き受けることに(勝手に)。私のピアノのすぐ横で、見守ってくれています。なんだか心強い気がします。
見つめていると、やっと手に入れたうれしさと同時にどうして私がここまでネウマ譜にあこがれていたのかが、はっきりしてきました。つまり、私は、絶対かなうことのない夢ですが、大昔、人類がまだ音楽を持たない時代にまでさかのぼり、そして初めて音楽を手にする瞬間を目撃(耳撃?)したいのです。どうして人は音楽を持ち始めたのか?その瞬間こそが、2015年のいま、このワンフレーズを歌いきる意味が見えてくると信じるからです。プティアールのみんなに伝えたい、そしてそここそが私の原点になるはずです。