ミレー展
レッスンがお休みなので、三菱一号美術館に行ってきました。
秋色の濃いブリックスクエアの空気も相まって、バルビゾン派の絵を鑑賞するのにふさわしい一日でした、
30年前、パリ留学中のある日、バルビゾン村に立ち寄り、ミレーの「晩鐘」「落穂ひろい」そのままの景色に思わず息をのんだ遠い日を思い出しました。それまでの絵画は宗教的でなくてはならなかったり、ある種の高貴な主題でなくてはならなかった、それをミレーをはじめとするバルビゾン派の画家たちは、土にまみれる農民たちの労働の姿こそが高貴であるとして、村に住み彼らを、畑を、森を描き続けたのでした。
種をまく人の太い腕、ひたむきに鍬を振り下ろす後ろ姿、土を耕す その背中・・すべてに神々しささえ感じられるのは、画家が伝えたかったメッセージに他ならないと強く感じ、胸にこみ上げるものがありました。
ミレー以外の画家の絵も多く展示されていましたが、こうして百年以上の年月を経て現代に受け継がれてきた遺産ともいうべき優れた芸術をほんの数センチの距離でみつめることのできる幸せな瞬間を体験してきました。
このことは、まさに音楽でも同じと言えるでしょう。300年の時を経ても、色あせることなく私たちの心を揺さぶる力を持つ本物の音楽、時空を越えても、発信する心と受け止める心は同じ人間の心、タイムトラベルは本物の芸術の中に置いてはいとも簡単なのですね?!
日暮れが早足で近づいていましたけれど、すぐに現実に戻りたくなくて、近くのカフェで食べたタルトタタンの美味しかったこと!この日に受け止めたインスピレーションをまた来週から始まる、レッスンに生かしたいと願いつつ帰途につきました。